コラム

第2回「働き方の仕組みを見直そう!」
2020.02.18 齋藤敬一

前回は、会社経営の考え方について「四方良し」について書きましたので、今回は、「働き方の仕組み」について考えてみたいと思います。

政府が「働き方改革」を真剣に行なっていますね。

経営者からは、政府の言う通りにやっていたら経営できないと言うボヤキが聞こえてきそうですが、僕は、悪いことばかりではないと思います。

現実問題は、色々あります。従業員をそこまで休ませたら仕事が回らないとか、人を中々採用できない状況ですぐに対応するのは無理だとか、人件費をもっと抑えないと国際競争に勝てないとか……。

ごもっともだと思います。

政府は、一億総活躍社会を実現しようと言っています。多くの働き手はすぐには、真意を理解できないと思いますが、基本的にこのままでいくと構造的な人材不足は解消できません。18歳以上60歳以下の日本人の生産労働者が労働を全て行うことを前提にしたら、労働力は全く不足します。

一方で、ホワイトカラーの生産性の低さ、元気な60歳以上の脳や手先に蓄えられている知恵や知識を活用できていないこと、子供達の知恵や感性が社会に生かされていないこと、優秀な外国人の上手な活用が大手企業以外で中々進まないこと、一次産業の超高齢化、女性や高齢者の働く機会がまだまだ不足していること、障害者の才能の活用が進まないこと……などなど一億総活躍には、課題山積ですね。

元気な成人男性が働くことを前提として作られた社会、それを前提とした会社の中の仕事の仕組みや組織体制、人間が働くことを前提とし、ロボットやAIの活用は、全く手がつかない事務系の仕事や営業系の仕事など……改善すべきことが山積みです。皆さんの会社ではいかがですか?

弊社のクライアントでも、中には30年以上同じやり方で業務を回しているところが多々見受けられました。属人的な業務フローを誰も変えられないでいる事で、人事ローテーションすらできないなんてことも起こります。歴史のある中小企業の中に、この現象は多いですが、ビックリすることも多々ありますね。

私の家内が、派遣社員として行く企業も本当にビックリすることだらけです。仕事のオペレーションが無駄だらけなのですが、その仕組みを変更することが自分の仕事だと誰も思わなかったので、10年間全く変更されてこなかったってこともあります。しかも、何社も。

少し聞いただけでも生産性が5倍くらい改善するのでは無いかと思われる職場がとても多いです。今は、改善されているかと思いますが、少し前までは市役所などの自治体の事務作業も同様のことが起きていました。

一方で、もっと良い人材を兎に角安く活用したいと考えるのは、経営としては望む事なのですが、短期的な利益のためにそれをするのは知恵がなさすぎると思います。良い人材は、人件費も高いのが今のご時世です。

僕がいたリクルートでは、優秀でリーダーシップのある人材、さらに、根性と体力もある人材を多く採用し、他社よりも高い給与で、彼らの才能を開花させるシステムに乗せて活用していました。企業としては、若くて無理の効く時期に思いっきり働いて貰い、40歳前に卒業してもらう事で総人件費を上手くコントロールしていました。

創業社長の江副氏は、社員に上場企業の給与平均の25%高い給与を保証していました。そして、沢山の成長の機会とチャンスを用意することで、優秀な人財を採用することに成功していました。人の採用は、その人財の生み出す利益や価値をイメージして行うと良いと思います。

一人の人財の生み出す利益と採用費も入れた総人件費をちゃんと計算していたのです。学ぶところは多いですね。→このテーマは奥が深いので、別のコラムで詳しく話そうと思います。

四方良しの経営では、従業員の家族と従業員の幸せ、取引先と取引先家族の幸せをも視野に入れて長期的な視野で他の企業で働くよりも相対的に良い処遇を実現することを考えて経営をすることを勧めています。

それによって、非常に好感度が高く評判の良い企業経営が出来、ファンも増え、採用や事業拡大がしやすくなると言う考え方です。勿論、良い人材が集まりやすいのは言うまでもありません。

ですから、即効性のある対処療法ではなく、「働き方改革」を良い機会に捉え、構造的に人が羨むような経営を実現することを目指していただきたいと思うのです。

ここで、経営者も含め従業員の行動について考えたいと思います。それは、構造改革を行うことの難しさの大きな要因になるのでシェアします。

そもそも人間の脳は、新しい事よりも慣れていることを好みます。それは、新しいことをやろうとすると脳がフル回転しないといけないから、好まないのです。

脳がフル回転するとエネルギーを沢山使ってしまいます。すると食事をより沢山しないと追いつかないのです。人間は、つい数十年前まで十二分の食事をとることができませんでした。飽食でダイエットが盛んになったのは人間の歴史で言うと最近の事なのです。ですから、常に蓄えようとするし、なるべくエネルギーを使わないで生きられるようにできているのです。

それから、もう一つやりたががらない理由があります。
それは、新しいことは不安が付きまとうからです。

・自分ができるようになるのか分からない=自分の仕事がなくなる不安
・新しいことをやったら失敗する=失敗する怖さ
・自分が知らない領域ややり方<これまでの慣れた領域ややり方

つまり、これまでの方が「上手くできて不安がない」と考えます。ですから、新しい仕事の段取りや方法を検討したくないのです。殆どの改革は、一人一人のこの「怖いと言う感情」「面倒くさい」と言う心を乗り越えるところから始まります。

残念ながら働き方改革は、働く人個人個人にとっては、切迫した問題ではありません。しかし、経営にとっては、非常に切迫した問題になりつつあります。何故なら、法律違反で有罪にさせられてしまうかもしれないからです。

また、下記の問題も非常に大きく関係してきます。

・人の採用が十分にできない
・雇っている人が辞めてしまう
・働いても働いても利益が出ない

しかし、これらも業界初、世界初、他社では真似ができないなどなど社員がワクワクする挑戦に変える事で、人財が力を発揮するようになります。改革の価値を全員で共有する事がとても重要なのです。

経営する上での構造的な問題が、多くの企業で潜在的にあり、それがところどころ顕在化しつつあると言う状況ではないでしょうか。あなたは、問題が大きくなる前に手を打つ経営者ですか? それとも、問題が噴き出すまで何もしない泥縄な経営者ですか?

折角ですから、政府が予算(助成金)をつけて旗振りをしていることをうまく活用し、他社に先駆けて経営の構造的な問題を解決するよう経営ボードで真剣に考え、従業員とともに取り組むことでチャンスを広げる方が得であり良い結果を得る近道だと僕は考えます。

バジェットでは、経営の構造改革を人事の専門的な立場でお手伝いしています。更に、助成金に専門特化した社労士法人とチームを組んで、国や自治体からの助成金なども含めて戦略を達成するお手伝いをしています。この専門家チームは、助成金受給を専門に15年業務を行なっている実績の豊富な社会保険労務法人です。何なりとご相談くださいませ。
saito@budget-inc.jp まで!

※因みに助成金は厚生労働省と自治体が雇用保険で徴収している費用の中から75%くらいを充てて、積極的に働き方改革をする企業に還付をする制度です。一人でも雇用保険を支払っている社員がいたら活用できますよ。

積極的に活用すると管理部門で大きな純利益を上げることになり、ES強化、マネジメント力強化、ブランド構築強化が可能になります。大手自動車メーカーグループ、アパレルSPA大手企業……や、昨今の成長企業(ダイエットトレーニング大手)などは、助成金を戦略的に活用し、会社の成長やリスクヘッジに役立てています。